高校国語教室

評論文読解のコツ


目次


1.評論文の構造

評論文の文章は文章全体を通して、この文章では何が言いたいのか、どういうことなのかを論理的に説明するために、ある程度文章の流れの型が決まっています。そして、この流れの型は各パラグラフ(段落)内でも成立します。

では、ここでいう型とは何かを説明していきます。

論理展開図
図のように、文章はこのように、何かしらのテーマがまず最初に提示され、続いて、筆者の主張が一般的です。
そして、その主張を何度も言い換え、分かりやすく噛み砕いたり、具体例をあげたりして、いわば、洗脳するかのように、自分の考えがいかに正しいかということをのべて、最後にまとめへと結ぶのです。
ただここで、1つ考えてほしいこと。
それは、国語の文章は全てが何かの書物全体の中から、一部分を引っ張ってきたいわゆる抜粋ですよね?

つまり、文章のどこを引っ張ってくるかによって、テーマの段落、主張の段落といった部分が入っていたり、入っていなかったりする訳です。

すると皆さんは、じゃあ論理展開の型を覚えても、いまいち意味がないじゃないかと思うかもしれませんね。
しかし、安心してください。それでも読めますから。

なぜなら、文章全体、全てを理解する必要はないからです。
これを聞くと「?」となりますよね。

そもそも、評論文はその分野の専門家、その分野に精通した詳しい人が書いた文章です。ど素人の我々に正しい理解ができる訳がないのです。

だから、理解はしようとはしない。
むしろ、理解しようとしてはいけないのです。

ではどう読むか?
機械的に読むのです。

2.評論文の読み方


では、機械的読むとはどういうことか?
「〇〇は△△だ」と言われたら、なんで?とは思ってはいけません。そういうものだと思って解くのです。なんというか、知ったかぶるというか??笑

例えば、
数学の三角関数の分野の問題で「sinθ=tと置く」という、置換をして解く問題を解いたことがあると思います。
この時、数学が苦手な人はなんで?と考えてしまいますが、ここでは「なんで?」と考えてはいけません。置くと言われたら置くんです。理由はどうであれ、そうすると何かわからないが解けますよね?
まずはそれで良いのです。

考え込むとドツボにハマります。
だって、見方によっては、
sinθ=tはy=sinθとy=tのグラフの交点と考えることも出来ます。
別の視点だと、sinθは波のグラフを表すが、tは直線ですよね?これを同じと置いて良いのか?
しかも、tについての二次関数に変形できるとなると、もう振動曲線か直線か、放物線か訳が分かりません。

数学が得意な人はまずそんなことは考えません。書いてあることに忠実に従って解きます。そうやってまずは言われたとおりに真似を繰り返す内にいつの間にか解けるようになるんですよ。

国語も同じですよ。
実際に読んでみましょうか。

3.実際に読んでみましょう

実際にセンターの1段落をもってきて見てみましょうか。2016年本試第1問の評論の第一段落です。

 着せ替え人形のリカちゃんは、一九六七年の初代から現在の四代目に至るまで、世代を超えて人気のある国民的キャラクターです。その累計出荷数は五千万体を超えるそうですから、まさに世代を越えた国民的アイドルといえるでしょう。しかし、時代の推移とともに、そこには変化も見受けられるようです。かつてのリカちゃんは、子どもたちにとって憧れの生活スタイルを演じてくれるイメージ・キャラクターでした。彼女の父親や母親の職業、兄弟姉妹の有無など、その家庭環境についても発売元の発売元のタカラトミーが情報を提供し、設定されたその物語の枠組みのなかで、子どもたちは「ごっこ遊び」を楽しんだものでした。

内容が変わっていて面白い文章ですよね笑
これを読んだときに、ただダラダラと読んでは意味がありません。

私が普段解く時、文章を見て頭の中では瞬時に「テーマ」か「主張」か「事実」か「言い換え」かを自動で振り分けて読みます。

ちょうど、イメージとしては以下のようになります。

 着せ替え人形のリカちゃんは、一九六七年の初代から現在の四代目に至るまで、世代を超えて人気のある国民的キャラクターです。その累計出荷数は五千万体を超えるそうですから、まさに世代を越えた国民的アイドルといえるでしょう。しかし、時代の推移とともに、そこには変化も見受けられるようです。かつてのリカちゃんは、子どもたちにとって憧れの生活スタイルを演じてくれるイメージ・キャラクターでした。彼女の父親や母親の職業、兄弟姉妹の有無など、その家庭環境についても発売元の発売元のタカラトミーが情報を提供し、設定されたその物語の枠組みのなかで、子どもたちは「ごっこ遊び」を楽しんだものでした。


すごくカラフルになりましたが、この部分で分かってほしいことは、
「テーマ→リカちゃん人形」、「主張→リカちゃん人形の存在(在り方)が時代とともに変わった。」というこの2点が読み取れれば十分OKでしょう。
つまり、この文の色分けはテーマ&事実前文の言い換え主張事実となっていたのです。

さらに、受験生ならばもう一歩踏み込んで、最終文では「かつての(昔の)リカちゃん人形について」の記述はあります。
主張には「時代とともに変わった。」という部分があったのを踏まえると、「今」のことがまだ書かれていないな~これから述べられるのかな?というようなことに気づけると、この先の予測ができるので、読みやすくなりますね。

こうして読んでいくと、ごちゃごちゃ書いていることが整理され、大学入試の文章でも簡単に感じますね。

ちなみに、さきほど、【「テーマ→リカちゃん人形」、「主張→リカちゃん人形の存在(在り方)が時代とともに変わった。」というこの2点が読み取れれば十分OKでしょう。】と述べました。

そう、ここが重要なポイントみなさんが評論文を読む上で読み取らなければならないことは、「評論文で読み取るべきは話のテーマと主張」ただこれに尽きます。

なぜなら、「事実」はあくまでも「事実」にすぎません。雑学程度に「へ~」と思っていればそれでよいです。また、「言い換え」はやはり「言い換え」です。「主張」の言い換えならば、「主張」の部分を理解すればOK。「主張」の意味が分かりにくかったら、「言い換え」を利用しましょう。ただそれだです。

4.文末表現

ここからは、主張の文の見つけ方について見ていきます。
主張の文は筆者の言いたいこと。つまり、強く言いたいことになるので、強調されることが多くあります。これを文法的に見ていくと、以下のような文末表現がある場合、主張になりやすいです。この文末がきたら気に留めておくようにしましょう。

  • 1.絶対に主張
  • ・疑問文(俗にいう問題提起)
  • ・反語文(反語は否定の強調否定の強調)
  • ・逆接の後(「しかし」「~が・・・」
  •  
  • 2.主張になりやすい
  • ・推量(~だろう。/~ではないか。/~かもしれない。)
  • ・強調表現(~なのだ。/~のである。/~べきだ。/~なければならない。/~ではないか。/~こそ・・・だ。/確かに・・・、しかし~)
  •  
  • 3.定義づけ(重要キーワード)
  • ・「~とは・・・だ。」(~の定義)

「1.絶対に主張」は説明も不要、主張だと分かるでしょう。
「2.主張になりやすい」は、説明を少ししましょう。推量は、一見、主張とは正反対な気がしますよね?
しかし、これもれっきとした主張になります。

推量とは、辞書などには「物事の状態・程度や他人の心中などをおしはかること。」といった意味で使われています。
また、「主張」の意味も考えてみましょうか。辞書には「自分の意見や持論を他に認めさせようとして、強く言い張ること。また、その意見や持論。」このように書いています。この意味を少し考えてみてください。気づきました?

推量って結局作者の心情を挟んでますよね?”おしはかっている”訳ですから。
準備のページで判断不可語について触れました。ここをしっかりと読んでいたらピンとくると思います。「推量」には筆者の「主観」が入ります。「主観が入る=主張に繋がる」なんです。

5.解釈のコツ

苦手な人に評論文と言えば??と聞くと、ほとんどが「書いている意味が分からない」と答えますね。その原因は何でしょう?
答えは修飾語句にあります。簡単に言うと、余計な語句が色々つきすぎていて、文の骨格、言いたいことが分かりにくいんですね。 これも実際に過去問で確認して見ましょう。

※ 2017年センター本試 第6段落より出題

コリンズとピンチの処方箋は、科学者が振りまいた当初の「実在と直結した無謬の知識という神のイメージ」を科学の実態に即した「不確実で失敗しがちな向こう見ずでへまをする巨人のイメージ」、つまりゴレムのイメージに取りかえることを主張したのである。そして、科学史から七つの具体的な実験をめぐる論争を取り上げ、近年の科学社会学研究に基づくケーススタディーを提示し、科学上の論争の終結がおよそ科学哲学者が想定するような論理的、方法論的決着ではなく、様々な要因が絡んで生じていることを明らかにしたのである。


パッと見ただけでは結構読みにくい文章ですよね。
ここで、ヒントです。
主語・述語・目的語といった、必要最小限の情報量に絞ります。
コリンズとピンチの処方箋は、科学者が振りまいた当初の「実在と直結した無謬の知識という神のイメージ」を科学の実態に即した「不確実で失敗しがちな向こう見ずでへまをする巨人のイメージ」、つまりゴレムのイメージに取りかえることを主張したのである。そして、科学史から七つの具体的な実験をめぐる論争を取り上げ、近年の科学社会学研究に基づくケーススタディーを提示し、科学上の論争の終結がおよそ科学哲学者が想定するような論理的、方法論的決着ではなく、様々な要因が絡んで生じていることを明らかにしたのである。
すると、どうでしょう。簡単に要約すると、「とある2人があるイメージを何かから何かに交換したんだな」「科学の争いが終わったのにはいろいろな原因があったんだな」と解釈できます。これならば、話もスッキリとし、意味が通っ言っていることは分かりませんかね?
上の「2.評論文の読み方」で述べたように、理解する必要がない読み方、機械的に読む読み方が、少しつかめてきましたか?

私自身、数学専門ではありますが、この科学の内容の本質的な部分は分かりませんよ。ただ、字面だけを追って言っていることの意味は分かります。

ちなみにここで出てくる、「コリンズ」や「ピンチ」「ゴレムのイメージ」「科学上の論争」などは知らなくてOK(私も知りません。聞いたことある程度です笑)。
ただ、「要因」といった言葉は知っておくべきです。こういう言葉は単語帳で覚えましょう。現代文の単語帳を学校でもらっていると思います。